海賊宇宙船地球号獄中記

1995生 Even if my body is no longer and it becomes the enumeration of words, I certainly stayed here.

個を殺す無貌の群体 Crowds

 

群衆心理 (講談社学術文庫)

群衆心理 (講談社学術文庫)

 

  人間は集団になると一頭の獣になる。ル・ボン曰く、『群衆に幻想を与える術を心得ている者は、容易に群衆の支配者となり、群衆の幻想を打破しようと試みる者は、常に群衆のいけにえとなる』。調教するか、喰い殺されるか。

 単に個人が多数集合するのみではなく、個人の観念や感情が一定の方向に転じ、個性が消滅している状態が心理的群衆と呼ばれる。群衆の性質は集団間の人間の平均ではなく、新たな「群衆心理」と呼ぶべきものを獲得することでバラバラの個々人から単一の存在になる。群衆心理の特徴、

  • 大勢の中にいることで責任の観念がなくなり、専ら本能的なものに支配される。孤立していたときは教養がある人でも、群衆に加わると野蛮人と化す。個人でいたときの無力感は消え、絶大な暴力の観念が現れる。平時は温和な市民も群衆心理の中にあるときは、容易に虐殺をやってのけたり、集団の目的のために自己犠牲を躊躇しなくなる(例、殉教など)。
  • 精神的感染・・・集団間の行動、思考を模倣するようになる。
  • 被暗示性、つまり、操られやすく、信じやすい状態になる。論理的思考は消え、感情と無意識に支配され衝動と暗示に隷属する自動人形が出来上がる(平時でもこの種の人間は存在する)。この無意識を動かすのが心象〈イマージュ〉である。事実は論理的思考による推理を経ずに心の中で好き勝手に解体され心の受け取った感情で事実を歪曲する。さらに精神的感染により集団間にこの心象は伝播する。

 これら群衆の特徴をふまえた上で指導者が人間を群衆として支配下に置く方法、

  • 信念の創造・・・ばらばらの集団を一定の方向に向かせるには、彼らが信じやすい信念を用意してやる必要がある。小難しい哲学ではなく、宗教的感情を呼び覚まし、心象に刻まれるものがいい。群衆が犯罪行為を行ったとしても罪の意識は感じず、集団内でよしとされていることを実行し、義務を果たした、という思いがあるだけ。
  • 断言・・・証拠や論証を伴わない無条件的な断言が、群衆の心にしみこみやすい。心象に働きかけ、想像力を喚起させるために、言葉を選ぶときはあいまいな言葉がいい(例、平等、自由など)。強烈な感動を加えることで群衆心理を起動させることが可能、言葉ばボタンであり、どのボタンを選ぶかで群衆を操作する。筋道立ったはなしより感情に訴えたほうが群衆を扇動するには効果的。政治の混乱や、信念の変化が起こった場合、ある言葉によって呼び起こされる心象に対して、非常な反感を引き起こすときがある(群衆心理の洗脳の解けかけている状態)。そんなときは事物に修正は加えずに、その言葉を、親しみやすいもの、偏りのないものに変更することで対処する。ジョージ・オーウェルの小説、『1984年』でダブルスピーク - Wikipediaという方法が使われているのが好例(ダブルスピークは現実でもよく使われる。リンクを参照)。このように、無防備なこころにとって言葉は魔術である。
  • 反覆・・・断言を反覆し強化。1度言われて信じないことも100回きかされると信じてしまう。
  • 感染・・・人間の模倣性を利用。皆が模倣できるように群衆が抱く信念は簡潔明瞭でなければならない。少数の賢い人間の考えが世論にならないのは小難しくて論理的思考を必要とするので感染力がないから。断言と反覆が集団内で了解され、意見の趨勢ができる。

 ル・ボンは民衆が余計な知恵をつけないようにと、学校教育を否定し職業の訓練だけしろと言ったり、実に西洋的な思想を披露している。フランス革命時の群衆の力に恐怖して、群衆を統治、操る方法もご丁寧に書いてくれている。群衆を統治する方法は今でもマスコミや広告会社、カルトが使うので注意が必要だ。

 参考動画

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